横浜地方裁判所 昭和38年(ワ)713号・昭40年(ワ)104号 判決
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〔判決理由〕二 よつて、進んで本件社宅使用関係の法的性質について案ずるに、およそ会社とその従業員との間における有料社宅の使用関係が賃貸借であるか、その他の契約関係であるかは、画一的に決定し得るものではなく、各場合における契約の趣旨いかんによつて定まるものと言わねばならない(最高裁昭和二七年(オ)第九八九号、同二九年一一月一六日第三小法廷判決、集第八巻第一一号二〇四七頁以下)が、かかる社宅の使用関係は、本来の性質上、雇傭その他これに類する特別の関係に基き社宅使用者の従業員たる地位の存在を前提とするものであるから、これを通常の建物の賃貸借とみるべき特段の事情のない限り、原則としてその雇傭等の関係の消滅又は従業員たる地位の喪失とともに終了し、ただその明渡にはその終了時の一時的住宅事情および明渡義務者と社宅所有者との双方の事情を衡平に参酌して相当と認められる猶予期間が与えられるにすぎないものであると解するを相当とする(横浜地裁昭和三三年(ワ)第七四二号同三六年九月二九日判決参照)。今これを本件についてみるに、本件にあらわれた全立証に徴するも右原則に対する例外的特別の事由を肯認しえず、却つて前判示事実と<証拠>とを総合し弁論の全趣旨に徴すれば「被告両名が本件各社宅(本件建物および本件室)に入居したのは訴外東急くろがね工業株式会社がその事業のために雇傭した被告両名に、その希望により、同会社の厚生福利施設の一である本件各社宅を維持管理費に充当しても足りるか足りないか判らぬ程度の低額の使用料(社宅料)を被告両名の月給から控除するという方法で徴収して同人等の居住権を認めたものであつて、その使用関係の基本的契約は固より対等の地位において締結されたものであるが、なおそれは被告等が右会社の従業員たる地位を保持することを前提とするものであること」が認められるから、本件各社宅使用関係は被告両名主張のごとく賃貸借ではなく参加原告主張のごとく社員の身分喪失と同時に終了する特別の使用関係であると解すべきである。
三 されば、被告両名はそれぞれ前記会社の従業員(社員)たるの地位を失うと同時に右使用契約の法律関係も終了し爾後本件各社宅を占有使用する権原がなくなつたのであるから、右会社に対してこれを明け渡すべき義務を負うに至つたものであるところ、被告両名が右会社の従業員たる地位を失つた事由のいかん又は予告期間の有無にかかわらず、社宅使用関係の終了と同時に明渡義務を履行せねばならぬとすることは経験則上知りうる当時の一般住宅事情や社宅借主の家庭的又は経済的事情等を参酌すれば酷に失し衡平の観念に反するから、右の明渡には具体的に相当と思料される猶予期間を与えるのが妥当であることは前判示の一般論のとおりであつて、参加原告主張の社宅管理規定はその施行が被告両名退社後に属することが<証拠>により明らかであるからこれはしばらく措き、参加原告主張の六ケ月の猶予期間はいささか短きに失するものといわねばならず上限として一年の期限の猶予を与えるを相当と判断する。すなわち、被告両名にはおそくとも昭和三四年一月二七日限り本件各社宅(建物および室)を右会社に明け渡すべき義務があり、翌二八日以降は不法占有者として右社宅所有者たりし右会社に参加原告主張の割合の損害賠償義務をも負うに至つたものといわねばならない。(若尾 元)